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秘境の肖像 [旅の断片]

 

旅立ちの前 blog.jpg

 

冬の知床のシンボルといえば、オオワシ&オジロワシ。

彼らは厳しい冬をのりきるための命の糧を求め、

はるばる繁殖地である北方ロシア・千島列島からやってくる。

野生の生命の縮図、生態系の頂点に立つ

彼らが飛来することこそが知床の自然の豊かさの何よりの証拠。

 

冬空にゆったりと舞うように飛ぶ姿を見上げているだけで、

200mmのレンズ越しに孤高のハンターのような姿を遠巻きに眺めるだけで、

いや、同じ風の中で呼吸をしていると思うだけで、無条件に幸福な気持ちになる。

 

トップ写真は、斜里窯のある峰浜地区からウトロへ向かう途中、

国道脇の浜辺の林で見かけたオジロワシ(もしくは、オオワシの幼鳥)。

波打ち際に食料となる何かが打ち上げられていたのか、

この日は数多くのオジロ・オオワシがこのあたりを飛び回っていた。

もう間もなく、今年の春を、恋を謳うため遥か北へ旅立っていくのだろう。

 

庭先の家族 blog.jpg 

 

一方、山里には厳しい冬も眠らず、人の暮らしに寄り添いながら生きる命もある。

エゾリス(↑)も、その仲間。写真のエゾリスは、登り窯のある斜里窯で通年暮らしている。

暖かな時期には庭や周辺の雑木で食料を探し、すべてが雪に包まれる冬には、

窯の主からひまわりの種や胡桃をもらって、暮らしている。

時には、自分で隠しておいた庭の胡桃の実を雪の下から掘り出して食べることも。

森で暮らす彼らの仲間も同様に越冬食を地面を掘って隠している。

幸運にもリスたちに忘れられた木の実たちは、翌春に新しい命をつむぎ、

森の次世代を担う若木になるのだ。エコだ、環境保全だと人々が声高に植林活動を

行うずっと以前から、森の恵みに生かされてきたモノタチは木を植え続けているのだ。

 

 

看板犬 blog.jpg 

 

知床には、このほかキタキツネやエゾシカ、カラ・キツツキの類を

通年で日常的に見ることができる。しかし、残念ながら

今回の滞在では天気に恵まれないこともあり、ここで紹介したイキモノにしか

出会えなかったので、写真は割愛。そのほかの、彼らには自らの足で

会いに出掛けていただけたら…と思う。これから初夏までの知床は、

山々の残雪と新緑のコントラストが美しく、旅には最高のシーズンだ。

 

さて、上の写真は、斜里窯の母屋の横で門番をしている

ゴールデンレトリーバー。都会では室内飼いが一般的なゴールデンも、

ここでは外飼いである。厳しい冷え込みの夜も、主手製のマイホームで

じっと朝を待ち続けてきたせいなのか、その表情は年齢不詳の哲学者のようだ。

 

 

火を見つめて16年 blog.jpg 

 

窯場で火守をしていたのは、16年間、2代目看板犬を務めてきたベロ君。

実は、我々が窯に到着した日、彼は母屋の玄関の土間でうずくまっていた。

老いた体にこの冬の寒さがこたえて、満足にご飯も食べられないほど衰弱。

せめて最期は暖かな場所で…と特別に入れてもらっていたのだ。

犬は外、が、お約束で暮らした身には暖かな土間はどうにも居心地が悪い、らしい。

どこか申し訳なさそうな顔でしょんぼりうずくまっていた。

 

ところが、窯に火が入り、寝床を通い慣れた窯場へ移してもらうと

ちろちろと燃える炎を飽きることなく見つめていた。するとどうだろう、

あんなにしょんぼりしていたのが嘘のように、少しずつ元気が戻ってきたのである。

長年、何度なく見守り続けた炎が土に命を吹き込み、うつわに変えるように、

老いたベロ君の体にも生きる力を与えてくれたのかもしれない。

  

極寒の冬にも負けないサモエド犬の遺伝子をもつ、老兵にも新しい春がやってきた。

今年の秋、主の手で再び築かれた新しい窯の横にも、彼の雄姿があるに違いない。

 

斜里窯には、このほか、母屋で3匹の猫が暮らしている。

もと長男の飼い猫だったアメリカンショートヘアのレオ君は、ネズミ捕りの名手とか。

暖かい時期には庭や野山を駆け回り、カントリーライフを満喫している。

残る2匹は、白猫みぃちゃんと牛柄ちょびちゃん。

人見知りの激しい彼らはめったに姿を見せない幻のニャンズ。

温かな手触りの器が生まれる場所には、さまざまな命が息づいている。

 

 

 

 

シーサーじゃないよ、狛犬だよ blog.jpg 

 

<番外の肖像>

 

「生き物万歳」が隠れテーマのこの記事だが、

番外の1枚を最後に。これは、斜里町市街地と峰浜の間にある

上赤神社の狛犬。神社の前を車で往来するたびに、視線を感じた。

その先にいたのが、ゆる系の顔立ちの狛犬さんだ。

 

近年、全国的に神社を巡って、狛犬ウォッチングをするのが、

一部マニアの間で流行っている、らしい。

北海道には、道内の狛犬の由来や歴史などをまとめた

「ほっかいどうの狛犬」(中西出版)なる書籍まで出版されている。

そんな話を何度か耳にしていたから、余計に気になり、

わざわざ、帰り道に立ち寄り、写真まで撮ってしまったのである。

 

今風のシーサーのような愛嬌満点の狛犬の肖像を

愛好家のための旅土産としてアップしておく。

これで、知床シリーズはおしまい。次は…なにか、おいしいモノを。

明日から仕事が続くので、更新はいつもの?ゆるゆるペースに戻します。

では、また、近いうちにお目にかかりましょう (・ー・)ノ 

 

 


nice!(70)  コメント(26) 
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コメント 26

お茶屋

窯に火が入り元気になられたとのご様子☆
とってもうれしいですね♪

お忙しいとのことですが、ご無理のありませんように・・・
ファイトでございます!
by お茶屋 (2009-03-25 17:59) 

Baldhead1010

冬が長いほど、夜が暗いほど、開けた時の喜びはひとしおでしょうね。
by Baldhead1010 (2009-03-25 18:12) 

kumimin

こんばんは。
大自然の中で自分の生き方をそれぞれ通して生きていく動物たち、見ている私たちも元気をもらうようですね=^^=
自分の居場所を知る老犬もいいなあ♡元気でね!!
by kumimin (2009-03-25 21:41) 

massa

MORIHANAさん、こんばんは。
エゾリスかわいいですね。初めて拝見しました。
自然界のしくみはホント感心させられることが多いです。
明日からお仕事、頑張って下さいね!
最後のおいしい!も楽しみにしています、ふふふ。
by massa (2009-03-25 22:20) 

green_blue_sky

自然が豊かですが、春が遠いですね・・・
こちらは花冷えで桜も休眠中です(;^_^A アセアセ・・・

お互いに仕事が忙しいですが、体調に気をつけて頑張りましょう。
by green_blue_sky (2009-03-25 23:04) 

axl-

ここでは犬に襲われなかったのかな?(笑)

随分と丸々と太ったリスだね。
横浜にもリスがいるとこがあるけど、
こんなには太って無いなぁ。

by axl- (2009-03-25 23:26) 

lotus☆

実は私も狛犬フェチ(シーサー含む)
各地でいろんなコに出会うのがうれしい。

しょんぼり顔のベロ君も、やっぱり窯が好きなのですね^^
そこに御主人の大事な何があるのか、ちーゃんとわかっているのですね。
by lotus☆ (2009-03-25 23:30) 

うに

リスもワンも、ふかふかころころですネ。
極寒仕様なのでしょうね。
ベロくんがオレンジに染まって、暖かそう。(^-^)
by うに (2009-03-26 07:23) 

そらまめ

おはようございます。
ベロくん、長生きして欲しいですね。
エゾリスさん、かわいい~。
こんな間近で見れるなんて・・・♪
狛犬のマニアの話、聞いたことあります。
それから、神社に行くたびに狛犬を一応写真撮って帰ってる
そらまめです(笑)
発寒神社? も撮りました。(例のところで食べた帰り) アハハ。
by そらまめ (2009-03-26 08:19) 

ナツパパ

知床の豊かな自然とその厳しさ...その自然と折り合いを付けながら生活をしている
動物も人間も素晴らしいと思います。

素敵な狛犬ですね。
可愛らしくて愛嬌があって、尾の立ち具合も良いです。
>愛好家の旅土産として...
ありがとうございます。
愛好家の端くれとして嬉しく頂戴いたします。
札幌では、最低2ヵ所の狛犬に、絶対会いに行くぞ、とココロに秘めつつ(笑)
by ナツパパ (2009-03-26 09:02) 

ぱふ

確かに、あんまり見ない感じの狛犬ですね。
愛嬌があっていいなあ。
by ぱふ (2009-03-26 09:19) 

rinco

ゴールデンリトリバーは叔父も飼っていますが、
横浜では暑すぎるようです。
5月でもすでに息が荒くて…以前尾瀬の雪が残る時期に連れて行ったら
雪の所を選んで楽しそうに歩くし、湿地帯には入ってしまうし…。
(まだ子犬で訓練所に入れる前でしたが、紐を持っていた妹の手は
血まみれになりました〜力がある!)
北海道に住まわせてあげたくなりますよ。
これからいい季節になりますね!
by rinco (2009-03-26 13:43) 

ヤヨ

狛犬マニアに嬉しい一枚をありがとうございます。笑
それを目当てに旅するほどではありませんが、
それぞれ個性たっぷりな狛犬は
旅先で見かけるとカメラをむけずにいられない
大好きな被写体です。
この子もちゃめっけたっぷりの顔立ちで可愛いですね~♪
ちょっと小柄だから、元気いっぱいの柴犬みたいです。
わんちゃんたち、みんないい面構えですね。
生き物たち皆が待ちわびる春が
早く知床にもやってきますように!
by ヤヨ (2009-03-26 15:05) 

sasasa

知床は、いつか自分の目で見てみたいと思っています(^_^)
ベロくん、元気になって本当によかった。
窯の火のエネルギーが伝わってきたのでしょうかね。
by sasasa (2009-03-26 21:17) 

Ranger

大自然と共存する知床
凄く憧れます!
by Ranger (2009-03-27 11:14) 

ぐーちゃん

長い時をきざんだ窯の最後、すてきなご旅行でしたね。
鳥は大好きですが、撮れるのは鴨程度。
オジロワシのお姿に感激です。
門番犬くん、口のあたりも貫禄があり、ライオンのよう……。
ベロくんが元気で春を迎えられますように♪
by ぐーちゃん (2009-03-27 12:02) 

ふじかわ

おwオオワシの幼鳥だw
by ふじかわ (2009-03-27 21:18) 

アマデウス

知床シリーズ感動しました!
by アマデウス (2009-03-27 21:26) 

YASH

冬は寝て暮らすなんて…などと自分の記事には書きましたが、
そうそう、エゾリスくんは冬でも眠らないんでしたね。
私が忘れっぽい理由、やっと分かりました(笑)

こんなところでなんですが、実家の柴犬の老嬢が一月の末、天に召されました。
あえて記事にはしなかったんですが…。
ベロ君と同じ歳、そっくりな眼差し、そして涙焼けにどきりとしました。
新しい窯の炎も、まわりの命達を暖め続けるよう祈ります。
by YASH (2009-03-27 23:17) 

m-grace

癒し系顔の狛犬が・・・☆きゃわゆい>m<
狛犬にも色々あるんですね。
しかもマニアもいるんですねぇ~へぇぇぇ
確かに同じモノでもその土地によって全然違ったりしますもんね。
興味深いです☆



by m-grace (2009-03-28 16:39) 

柴犬陸

ベロ君、いつもの居場所に戻ると元気になるんですね。
動物の本能なのかなぁ。
まだまだ頑張ってほしいです。
by 柴犬陸 (2009-03-29 23:31) 

まぐろとわさび

そういえば北海道で蝦夷リスに会うかもしれないと思って、
望遠買ったのでした。結局、出番ナシでしたが^^;
やはり可愛いな蝦夷リス・・・
一番会いたい蝦夷モモンガは旅をしていればいつか会えるかなぁ。
幻のニャンズ・・野山を駆け回るって爽快なのだろうな。
by まぐろとわさび (2009-03-30 16:38) 

てりー

知床は行ったことがないのですが、オオワシはかなりの迫力のようですね。北海道で生態系の頂点というとやはりヒグマを思い浮かべますが、オオワシというのは盲点でした。
by てりー (2009-04-01 10:39) 

benzo

「知床」というと、生きる力が湧いてくる場所、
というイメージがありますね。一度は訪れてみたい場所です。
犬達(狛犬含む)の表情がそれぞれ印象的でした。
お仕事の合間にでも、また素敵な写真を見せてください。

by benzo (2009-04-02 13:53) 

たま

リスのかわいいこと!! 残念ながらこの前の北海道では動物、まったく会えずでした。「門番をしているゴールデンレトリーバー」・・・いいですねぇ~~こういうワンちゃんを見ると大型犬を飼って、ワシワシかわいがりたくなります^^;

by たま (2009-04-02 15:00) 

soichiro

賢いですね、リス。
共生というよりはヒトがうまいこと利用されているのかな。
ベロさん、これからもご機嫌に過ごしてほしいです♪
やはり「あったかい」って、すてきですね~。
by soichiro (2009-04-07 01:32) 

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