Boy Meets Girl

 

 

 

　

山椒の葉が芽吹く頃、

千年の都から発射された竹林ロケット弾が

最果ての蝦夷地にひと足早い春を連れて来る。

　

　

　

　

　

筍が採れる、その竹林の地目は山林ではなく、畑。

翌年の豊かな収穫のために、秋には滋養に満ちた土を竹の根元に敷き詰める。

竹林の主が今年初めて、そんなことを教えてくれた。

　

触れれば指先に吸い付くような、

はんなりとした土の布団に包まった孟宗の子は、

里の山椒がやわらかな若葉を広げる頃に目を覚ます。

赤子をそっと抱き起こすように掘られた筍は、

酸化防止の働きを持つ特別な産着を着せられ、

はるばる津軽海峡を越え、我が家にやってきた。　

　

　　

　

　

　

　　　

竹林の湿度、香りを残したままの筍は、到着したらすぐに

何を置いてもまずは、長旅をねぎらって、糠風呂に入っていただく。

例え、数日後に試験が迫り、テキストと格闘していようと、猫が足元で踊ろうと、

はるばるやってきた客人を手厚くもてなすのが、礼儀というものだ。

　

ひと風呂浴びて、旅装束を解いた筍は、祇園の舞妓はんのような白肌に。

そのつややかな肌は、みずみずしく、ふくいくたる香りを放っている。

その美味しさを丸ごと味わうなら、やはり王道の若竹煮と焼き筍、筍ご飯。

写真は過去にも撮影し、紹介したので今年は割愛する（焼き筍は、2つ前の記事に）。

　

筍尽くしの献立の副産物として、大量に出た姫皮の半分は、

これもお決まりの梅肉和えに。残りはさて、どうしよう。

ふと思いついて、上の写真、姫皮とジャコ、実山椒の炒め煮にしてみた。

熱したフライパンに白胡麻油と冷凍庫にあったジャコ、実山椒を入れて炒め、

香ばしい匂いが立ってきたら、細く刻んだ姫皮も加えて、軽く炒める。

味つけは、みりんと醤油のみ。旨みはジャコから出るので、ダシは不要だ。

　

実山椒のピリリとした辛味と芳香、ジャコの旨み、姫皮のしなやかな口触りが

三位一体となった雅やかな副菜は、酒肴はもちろん、熱々のご飯にもよく合う。

後日、もう一度筍ご飯にしようかととっておいた根元、残りの姫皮を刻んで、

冷凍保存用に再仕込み。季節の常備菜として、しばらくは楽しめる。

　　

和食の世界では旬の素材の組み合わせを出会いモノという。

同じ頃に冬の眠りから目覚める筍と山椒もまた、永遠の恋人、に違いない。

　

　

　

　

 　

　

組み合わせの妙といえば、筍と牛肉。

　

上写真は、和牛カルビ肉と筍、さやえんどうをさっくりと炒め、

オイスターソース、黒胡椒で味付けた一品。

牛肉にはあらかじめ、紹興酒と醤油で下味をつけ、片栗粉をまぶしている。

　

写真は無いが、最後の最後まで大事にとってあった穂先1本分は、

縦6つ割りにして、しゃぶしゃぶ用の薄切りロースで包み、フライパンでこんがり焼いてみた。

レモン汁をかけて、山葵醤油で味わえば、

柔らかくサクサクとした食感の穂先に牛の旨み、脂の風味が絡んで、

焼酎にぴったりの酒肴になった。山椒を利かせた甘辛い醤油ダレを

絡めれて仕上げれば、この上ないご飯の友になるに違いない。

　　

　

今年も、遠くに住んでいるトモダチのお陰で

都の春を堪能させてもらった。北海道はまだまだ寒いが、

それでも、来月になればアスパラが旬になる。蝦夷の大地が育んだ

のんびり屋の春をチルド便に乗せて、竹林を慈しむ主に送ろうと思う。

　

季節になれば繰り返される、美味しいキャッチボールはプライスレスだ。

どんな高級グルメ、お取り寄せもかなわない。

　

タグ：北海道 札幌 京都 旬 野菜 babameshi マクロ

コメント 18

美味しさのキャッチボール☆
まさにプライスレスですね♪
by お茶屋 (2010-04-26 12:30) 

タケノコ・・・筍・・・旬ですね（＾＾）。
そう云えば、昨日のＴＶ番組で『春巻きを作る』って放映していましたが・・・
春巻きの中にタケノコを入れるのですね、驚きました＾＾；Ａｱｾｱｾ
by kontenten (2010-04-26 13:11) 

山椒の葉っぱ、めっちゃきれい～(人＾ー＾*)
筍は畑だったのですね！　知らなかったーorz
｢出会いモノ｣の姫皮と実山椒ジャコ炒め、とーっても美味しそ♡
旬のものを旬のうちに味わえるって、シアワセ☆
ほんとの贅沢とはそういう事なんじゃないかと、つくづく思います(._.)φ
by ひろころ (2010-04-26 13:49) 

お茶屋さん＞季節になると暮らしたことが無い土地から
旬のものが送られてくる…って、ても贅沢なことだと思います。
送ってくださった方の気持ちも、ダンボールに詰まっている気がしますから。

kontentenさん＞うふふ、私も見ました同じ番組。
春巻きには大抵、細切りの筍が入っています。多分、
食感の違いを楽しむために入れるのだと思います。
美味しいので、今度、試してみてください。
　
ころりん＞トップ写真の山椒の葉は、実は鉢植えなのです。
寒さが厳しい札幌では、お庭で育てるのは難しいようですが、
毎年筍の旬の盛りになると掌に載るくらいの小さな鉢植えが
お花屋さんの店先に苗ものと一緒に並んでいます。
竹林＝畑というわけではなく、この筍の故郷の林がそうだ
…という話です。京都の筍は、縦の繊維がきつくなく、とても
キメが細やかで、上品な味わいです。
by MORIHANA (2010-04-26 16:18) 

美味しいキャッチボール

いいですねー。
これこそ日本人の神髄！

旬の物は旬に。当たり前のようで難しい時代なのかも。
by macha (2010-04-26 18:07) 

山椒の新芽がでると、我家では「木の芽上用」という生菓子がでます。

う〜ん　竹の子と肉とサヤエンドウが美味しいそ。。。
たべたい〜　サヤエンドウと竹の子!
これも、今度我家の食卓に並びますね。。。
by meg (2010-04-26 19:53) 

素敵ですー。
もてなしの気持ちタケノコさんにも伝わりましたよ〜。
おいしそーだ。
こんばんはたらの芽をおもてなしする予定です。
我が家のもてなし結構雑かも。。。反省。。。
タケノコを生ハムで巻いてあるイタリアンで頂きましたけど、
おいしかったな〜。

by カエル (2010-04-26 20:28) 

おいしそうなタケノコ、近くで収穫できるのはいいですね～
タケノコご飯が食べたくなりました(-。－;)
by green_blue_sky (2010-04-26 20:35) 

タケノコおいしそう！！
タケノコって、いろんなものに合いますよね(^_^)
by sasasa (2010-04-26 20:58) 

こんにちは☆
おいしそうな筍～。
2枚目のお写真を見て、子供の頃筍の皮に梅干をくるんで
舐めた記憶がよみがえりました。
MORIHANAさんのブログを拝見していると、料理したくなってきます！
by Bianca (2010-04-26 21:29) 

うちにも山椒の木があって今芽吹いています。
でもね、ｓａｚａｎは山椒が苦手。
うなぎにも山椒はかけません。
唯一食べられないものかも。。

おととしはアゲハ軍団にせん滅させられてました。。

・・そう、あの香りと、アゲハの軍団が記憶の中でリンクしてしまい
どうも・・・＾＾；

筍まだたべてないなあ・・
by sazan (2010-04-26 21:32) 

たけのこも、MORIHANAさんちで美しく撮られて美味しく調理されて、
はるばるやってきた甲斐があったぜーって思っているに違いない（゜∀゜）
by mai (2010-04-26 23:06) 

筍と牛肉。相方にこれ作ってくれと写真を見せて頼みました。
飛びかんなの器も筍に合いますね。
by gaucho (2010-04-26 23:31) 

おいしそ～。
特に最後の一品が食べたい!!!
by manzo (2010-04-27 01:06) 

その時の食を楽しむ。季節を感じ、労働の後でいただく感謝の気持ち！
そういう心を持ち続けたいですね！
ありがとうございました。
by teddy0905 (2010-04-27 07:53) 

先様の心がこもった贈り物は本当に嬉しいものですね。
その、心と品物、どちらも同じ重みがあるなあ、と思います。
そういう贈り物は美味しく食べ尽くしてこそ．．．改めて、そう思います。
by ナツパパ (2010-04-27 08:03) 

和食の世界では旬の素材の組み合わせを出会いモノという　
この言葉を　忘れじと。。。
うちにも、丁寧にゆでられた筍が、いただき物で冷蔵庫に
筍ごはんなどいたしました
おじゃことの炒め煮に挑戦（　小さめの小女子があります｝
ですが　早速牛肉のと炒め合わせは、食卓にのぼる予定
しっかりした準備と要領をインプットいたしましたから
どれも　本当に美味しそう
by engrid (2010-04-27 17:39) 

なるほど・・・　　だからウチには山椒の木もあるんですね（。・　・）ｂ゛
確か母は、遠い記憶なのですが、
姫皮は山椒の葉っぱ（すり鉢で、すりつぶした？）を加えた酢味噌和えにしていたような・・・
違ったかな。。。
いま電話しましたら（しました＾＾；）繋がらなかったので、
のちほど確認して、また来ます（。・・。）♪
by フサヲ (2010-04-30 20:40)